日本で「第九」が初演されたのは、ちょうど100年前の1918年。
徳島の俘虜(ふりょ)収容所でドイツ人が演奏した。
日本人による初演は、6年後の1924年のことである。
この前年、関東大震災が発生。
復興の途上で開かれる第九の演奏会は、各界の大きな関心を呼んだ。
「疲れ果てた心を振り起して、此処(ここ)に吾人(ごじん)は『歓喜の歌』を謡(うた)おうとする!」
と、日本の音楽学者の草分けである田村寛貞は記している。
演奏会当日は、数時間前から長蛇の列ができ、会場は廊下まで聴衆であふれた。
大盛況の演奏会は、人々のすさんだ心に希望の火を灯すものとなった。
失われていく聴力、保守的な旧社会の人々からの圧迫、経営区や家庭の問題
ベートーヴェンは絶えず深刻な苦悩にさいなまれていた。
その一つ一つと向き合った末、「悩みを突き抜けて歓喜に至れ」と、人間精神の勝利を歌い上げるた第九は、今なお世界の人々の心を鼓舞してやまない。
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