第112回 イル・ロンバルディア
モニュメント(5大クラシック)のひとつに数えられ『落ち葉のクラシック』の異名を持つ過酷なレースを振り返る。
昨年は最終局面でテクニックを魅せたニバリが優勝
昨年は最後の登りでピノが飛び出し、そこにニバリが反応。
その後アラフィリップ等も仕掛ける。
先行したニバリは超人的な下りのテクニックでピノを置き去りにし、
そのまま独走に持ち込み逃げ切りで快勝。
地元イタリアが湧いた。
アルカンシエル・ベルベルデは虹色バイクで登場
やはりスタート前はディフェンディングチャンピオンのニバリにインタビュアーが集まる、
そして先日、世界選手権を制したバルベルデ。
アルカンシエルのお披露目。
更にこの日はバイクも虹色仕様!
そして同じく世界選で2位だったバルデ、3位のウッズ。
バルデはフランス人にしては珍しく英語でインタビューに答えるというイイ奴ぶり。
引き続き調子は良いようでリベンジを誓う。
メイン集団はバーレーン・メリダがコントロール
スタートしてようやく逃げが決まると
メイン集団はディフェンディングチャンピオン・ニバリ率いるバーレーン・メリダがコントロール。
ニバリ兄弟、イザギレ兄弟、ポッツォビーボ、ペリツォッティ
過酷なコースだがチーム力あるメンバーで最終局面まで枚数が残せそう。
今シーズン限りで引退を表明をしているペリツォッティは現在40歳。
現役最後のレースは地元イタリアのクラシックレースを選んだ。
イザギレ兄弟は来シーズン揃ってアスタナへ移籍。
新城幸也選手は既に来年もバーレーン・メリダで走ることが決まっている。
レースは残り70kmあたりで動き出す
この辺りから集団を引くバーレーン・メリダがペースアップ。
クイックステップはエースナンバーのボブ・ユンゲルスが集団から遅れてしまうが、コースプロフィール的に向いている”登れる”エンリック・マスに勝負を賭ける。
UAEエースナンバー、ダン・マーティンは周囲の動きを伺っているかのように集団後方で影をひそめている。
好きだなぁこの人の走り方。
聖地マドンナ・デル・ギザッロ教会
残り60kmあたりでサイクリストの聖地とされるマドンナ・デル・ギザッロ教会があらわれる。
イタリア自転車競技の博物館のようになっており、
歴代のマリアローザやアルカンシエルなど様々なジャージやバイクが飾られているそう。
そして先頭の選手が近ずくと教会の鐘が鳴る伝統になっており、
ここを先頭で走ってギザッロの鐘を鳴らすことが選手たちのひとつのステータスにもなっている。
その頃、集団内では
昨年大健闘のティボー・ピノは集団前方に位置取り。
ピノは直前のミラノ~トリノ2018で優勝。
他のメンバーも含めグルパマ・FDJはコンディションが仕上がっている。
ロットNL・ユンボが捨て身覚悟の集団アタック
残り50km地点、登りが始まる。
そこでロットNL・ユンボが一気に仕掛ける。
エースのログリッチェを引き連れて凄まじいペースアップ。
それにより集団から遅れる選手が続出し半数ほどが脱落。
仕掛けたロットのアシスト選手たちも次々と力尽きていく。
これはマジで凄かった!
その勢いは止まることなく45秒差あった先頭集団を一気に吸収していった。
最難関ムーロ・ディ・ソルマーノ
ムーロ・ディ・ソルマーノ
登坂距離2km、平均勾配15.8%、最大勾配27%
”世界で最も過酷な自転車道”
別名『不可能な怪物』
この”壁”のような激坂区間は文字通り最大の難所であり今日の最難関。
ロットの選手がログリッチェを引いて凄いスピードで入っていく。
道幅は3mほどに狭くなり勾配がきつくなる。
集団が縦に伸びる。
急勾配に差し掛かった。
満を持して、ログリッチェがアタック!
ひとり集団から飛び出す。
動き出す優勝候補たち
”ソルマーノの壁”を登っていく集団から続いてニバリが抜け出し、それにピノが反応する。
2人はそのままペースアップし先行していたログリッチェを抜き去る。
残された集団は破壊され、ここでバルデが遅れてしまう。
これは意外だった。
相当厳しいレース展開になった。
残り距離はまだ45km。
スカイが異例の長期契約を結んだ逸材
先頭2人はようやく”ソルマーノの壁”を登り終え長い下りに入る。
下りが得意なはずのニバリだが、いまいちリズムがつかめない。
逆に下りが苦手なピノだが、しっかりニバリについていく。
ニバリは一時ピノを前に出すが、やはりペースが上がらず再び前に出る。
そこに単独で上手く下ってきたログリッチェが合流する。
後方の集団でも動きがあり、ベルナルが下りで集団から抜け出し追走をかける。
類まれなそのセンスは下りでも大いに発揮され、先頭との差がみるみる詰まっていく。
さすがチーム・スカイが5年という異例の長期契約をするだけの逸材。
エガン・ベルナル、恐るべき21歳。
そして残り33km地点で先頭集団は4人になる。
先頭と集団の差が明確に
先頭はニバリ、ピノ、ログリッチェ、ベルナル、
実力ある面子が揃った。
4人は協調して集団を離しにかかる。
集団はEFドラパックの若手ダニエル・マルティネスがハイペースで引くが、
バーレーンのポッツォビーボがしっかり抑えて先頭交代をさせない。
先頭とのタイム差は47秒。
残り27km
この時点で先頭4人で余裕がありそうなのは、
ニバリ、ピノ、ベルナル
登り区間でログリッチェが先頭交代できなくなっていた。
集団はダニエル・マルティネスの鬼引きで先頭に37秒差まで詰め寄る。
残り20km
ピノがアタックを仕掛けるがニバリがこれに反応。
ベルナル、ログリッチェは反応できず置いていかれる。
しかしなんとかベルナルだけは2人に追いつく。
もう一つの難関”チヴィリオ”
残り17km
ここまでどの選手も相当に消耗しているのは間違いない。
しかしここでさらなる難所が待ち受ける。
”チヴィリオ” 登坂距離4.2km、平均勾配9.7km、最大勾配14%
ピノがここでまたアタックを仕掛けるがニバリがチェック。
今度はベルナルが反応できず2人に離されてしまう。
下りが苦手なピノはこの登り区間でニバリを置いて行きたい。
ニバリは無理をせずピノについて行きさえすればこの後の下りで離せる。
2人の駆け引きが続く。
集団ではダン・マーティンがペースアップし先頭とのタイム差を32秒まで詰まる。
ここでバルベルデが遅れてしまう。
先頭ではピノが再三アタックを仕掛けるが、
ニバリがその都度しっかりチェック。
昨年と同じ展開になっていく。
ニバリ盤石の体制。
残り13km
集団でも早く先頭に追いつこうとウラン、ダン・マーティンが次々とアタックを仕掛ける。
前年覇者ニバリが自分の勝ちパターンに持ち込んだかに思えた。
ピノが再びアタック。
しかしこのアタックにニバリは反応できなった。
後ろを振り返りニバリが着いてこれないのを確認するとさらに踏み続けた。
ようやく単独になれたが表情は険しい。
ピノも限界だった。
ピノが先頭で下りに入り、ニバリとの差は既に22秒。
ニバリは疲れからかいつもの鮮やかな下りが見られない。
一方ピノはいつにも増してリズミカルに下っていく。
ニバリとの差が25秒に広がる。
独走
残り2kmあたりでニバリは集団に追いつかれるが再び踏み込んで突き放す。
ニバリ、再び単独2位。
先頭のピノは残り1kmで勝利を確信し笑顔がこぼれる。
そしてそのままガッツポーズでゴール。
先日のミラノ〜トリノに続きピノが優勝。
まさに攻めに攻めて勝ち取った勇敢な勝利に2015年のラルプ・デュエズを思い出した。
このイタリアが大好きなフランス人はモニュメント初勝利。
おめでとうティボー・ピノ!
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