舞台「リア王」に臨む日々を、
主演の山崎努さんが克明に記録した『俳優のノート』(文春文庫)
演技にかける情熱や役作りの苦闘などが垣間見えて興味深い。
例えば台本の読み込みについて。
作品全体を理解すること。
そのためには、自分の役を中心に読まないこと。
他者の役を理解しなければ自分の役も理解出来ない。
自分のせりふを覚えるだけでも大変な作業に違いない。
だが、その”自分中心”の位置をいったん抜け出し、
共演者の役柄をつかむ。
そうして全体を俯瞰する中で、
自分の役を捉え直し、
表現を深めていくという。
自分を理解するために、他者を理解する
現実の生活にも通じる示唆がある。
自分の考えだけに固執していると、
おのずと世界が狭くなり、
時に自分の進むべき方向を見失う場合がある。
対話の場においても、こちらの想いを伝えることは大切だが、
まず相手の話をじっくりと聞きたい。
その中で自身の視野は広がり、
考えも深まっていく。
人間は人間の中で磨かれるのである。
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